元塾講ママのシンプル知育

元中学受験塾講師。5歳と2歳の息子たちの「塾無し中学受験」を目論んでいます。

【二月の勝者 】1〜16巻一気読み!元スパルタ塾講ママの率直レビュー

中学受験を題材にした大人気漫画「二月の勝者」。

元塾講師の目から見ても、非常にリアルで興奮する内容でした。

 

実名で登場する超難関中学も!リアルな内容に思わず塾講の血が騒ぐ!

こんにちは。元スパルタ塾講ママです。

中学受験を題材にした人気漫画「二月の勝者」

 

なかなか読むチャンスが無かったのですが、年末年始に思い切ってまとめ買いしました。

 

最新刊の16巻では2/1の東京・神奈川入試がスタート。

まさにクライマックスといったところで次巻の発売を待つのは非常につらいものがあります 笑

 

元スパルタ塾講かつ二児の母の立場から、「二月の勝者」の感想を塾講時代のエピソード共に述べてみたいと思います。

 

子ども・塾・保護者すべての視点がリアル!圧巻の取材力!

どの生徒のエピソードも、自分の教え子たちと重なるところがあり、「まさに!」と納得したり思わず涙したりするシーンが何度もありました。

 

親は子を最善の道に進ませてあげようと必死になり、子は親に喜んでほしくて(失望されたくなくて)時にはズルい方法にも走ってしまい、講師は生徒に期待するからこそプレッシャーをかけてしまう。

 

まさに自分が10年間経験したことが凝縮されており、作者の高瀬志帆先生の豊富な取材と深い洞察、ストーリーの構成力に圧倒されました。

 

どのエピソードも印象的ですが、やはり中学受験の闇の側面を深く描いた島津順君のエピソードは色々と感じるところがありました。

 

子への期待が次第に教育虐待へとエスカレート

登場初期では「成績は良いけれどなんだか嫌な奴」だった島津君。

 

しかし話が進むにつれて、父親の過剰な学習管理とそんな夫の存在に怯える母親の姿が明らかになっていきます。

 

父親は自分の大学受験での成功体験を息子の中学受験にもあてはめ、勉強を苦行として我が子と妻に強いてしまいます。

 

それは教育虐待といえるほど過酷なものでした。

 

「自分が頑張らなければママがパパにいじめられる」と思い、父親から母親を守るために島津君は必死に「優秀」でいようとしていたんですね。

 

行き過ぎた学習管理は次第に息子の心身を追い詰め、「このままでは順が壊れてしまう」と限界を悟った母親は、息子を連れて家を飛び出してしまいます。

 

「12歳の受験と18歳の受験は違う!」中学受験の真理が凝縮された黒木先生の言葉

母親からのSOSの電話に黒木先生が駆け付けた島津宅は、テーブルがひっくり返され滅茶苦茶な惨状。

 

状況を悟った黒木先生が父親に放った言葉が

「12歳の受験と18歳の受験は違う」

でした。

 

まさにこれは島津君に限らず、すべての子どもたちに当てはまる真理だと感じます。

 

「本人次第」という言葉に逃げてはいけない。子どものために大人ができること

塾講師として働いた10年間、様々な生徒に出会いました。

 

勉強が好きで得意な子もいましたし、苦手だけれど一生懸命努力する子もいました。

そしてなかなかモチベーションも成績も上がらない生徒ももちろんいました。

 

そんな「できない子」を目の前にしてしまうと、塾講師の中には「結局本人のやる気次第だから」と言い放つ人が少なくありませんでした。

 

しかしある生徒との出会いで、私はたった12歳の子どもが挑む中学受験では「本人次第」という言葉を軽々しく使ってはいけないと実感しました。

 

問題行動で大人の注目を集めようとしていたK君

 

 

新しく赴任した教室でK君とは小6の春に出会いました。

 

元気な子が多いクラスでしたが、K君は特にヤンチャで授業と関係無いことを話したり、勉強しようとする友達に絡んだりして、授業の進行を妨げてしまう問題児として講師たちもお手上げ状態。

 

そんなK君のいるクラスを夏期講習で私が担当することになりました。

 

初日にK君の言動を注意深く観察し気づいたのは「K君は構ってほしくて大人の注目を集めようとしている」ということでした。

 

先手必勝!しつこいほどこちらから構い尽くす!

そこで授業後K君のを呼び

「明日の授業30分前に塾に来て漢字テスト対策を一緒にやろう」

と声をかけました。

 

するとK君は驚きと照れが混ざったような表情で「分かった」と返事し、翌日約束よりも早い1時間前に塾へ来てくれました。

 

結果、いつもは50点前後しか取れなかった漢字テストで85点を獲得。

 

初めての高得点に気を良くしテンションの上がったK君は授業中もうるさくなりそうでしたが、私はあえてK君を積極的に指名。

 

矢継ぎ早に質問を投げかけ、授業と関係ない発言をする隙を与えませんでした。

休み時間も授業後もとにかく時間を見つけては話しかけました。

 

すると徐々にK君の問題行動はなくなり、落ち着いて授業を受けられるようになったのです。

※元スパルタ塾講ママが漢字テストにこだわる理由はこちら↓ ↓

jukukoumama.com

 

その後K君は第一志望だった大学付属中学へ無事に合格しました。

 

問題児になってでも大人の注目を集めたい!優等生の弟と比較され自信喪失。

K君には2歳年下の優秀な弟がいました。

 

K君も決して学力が劣っていたわけではないのですが、弟はとても落ち着いていて大人から叱られることは滅多になく、兄弟でこうも違うのかと驚くほど対照的な二人でした。

 

その結果、どうしても周りの大人たちはヤンチャさが目に付くK君ばかりを叱ることが日常的になっていたようです。

 

褒められず叱られてばかりのK君はその寂しさからか益々ヤンチャな行動をエスカレートさせることに。

 

塾でも多くの講師が匙を投げるほどの問題児になってしまっていました。

 

子どもの可能性を伸ばすも潰すも大人次第。12歳は子どもから大人への変化の始まり

叱られる事でしか大人たちから注目される方法を知らなかったK君はずっと不安だったのかもしれません。

 

しかし初めて積極的な興味関心を示されたことで、過剰に大人の気を引く必要が無くなり、安心して授業を受けられるようになったのだと思います。

 

大人の接し方一つで、もしかしたら彼の問題行動は非行へとエスカレートしていたかもしれません。

 

12歳という子どもから大人への階段を上り始めるとても微妙な時期に、ハードな壁を乗り越えさせる中学受験。

 

うまく利用することで子どもを大きな成長へと導く一方で、ややもすると自尊心を失わせたり大人への不信感を持たせてしまうことにもなりかねません。

 

18歳は「自分のため」に頑張れる。しかし12歳は「親のために」頑張りたい

18歳はすでに反抗期も落ち着き自立しはじめる青年期。

 

自分の人生のために選択することができます。

 

しかし12歳は生意気に見えてもまだまだママパパが大好きな子ども。

 

もちろん自分の考えをしっかり持って志望校を考えている子もいるのですが、それでも「ママやパパに喜んでほしい」という気持ちが根底にあることを忘れてはいけません。

 

親が過剰に期待したり失望したり、そうした言動が子どもを深く傷つけるてしまうのです

 

「本人次第」は大人の責任逃れ。大人は自分の言葉の重みを忘れるべからず

 

 

優等生の島津君と問題児だったK君

 

対照的に見える二人も、大人からの働きかけ次第で潰されかけたり、逆に強く逞しく成長したりしました。

 

中学受験に関わる大人は、その子の人生に少なからず責任を担っていることを忘れてはいけません。

 

だから「本人次第」などと軽々しく言わないでほしいと思います。

 

親となった現在、私の背負う責任はさらに重いものになりました。

まさに子どもの人生そのものを背負っています。

 

気負い過ぎてもきっとうまくいかないのでしょうが、自分の言葉や行動の重みを忘れてはいけない。

「二月の勝者」を読んで改めてそう感じました。