中学受験におけるいわゆる頭の良い子、すなわち偏差値が高い子というのは、いったいどんな子なのでしょうか?
こんにちは。元スパルタ塾講ママです。
昔塾講時代に同僚の算数の先生が次のような言葉を言いました。
中学受験の偏差値は精神年齢に比例する
この言葉、その時は「そうかもしれないな」くらいの理解だったのですが、改めて考えてみると実は真理を鋭くついていました。
じゃあ精神年齢なんて努力で変えられるものじゃないから、精神年齢が低いうちの子は頑張っても成績は上がらないの?と思われるかもしれません。
しかしそんなことはありません。今回は中学受験だからこそ可能な、精神年齢を上げる方法を説明したいと思います。
※ここでいう「精神年齢」とは、心理学の専門用語ではなく、一般的に用いられる「実年齢よりもしっかりしている」という意味で使います。
「あと伸び」代表B君の話
※こちらの記事に登場したB君です ↓↓
B君は以前「あと伸び」の代表例としてご紹介したのですが、実は小6の時に彼を大きく変えたきっかけがありました。
尊敬するお父さん認められた!
Bくんのお父さんは医師でとても忙しい方でした。
けっして子どもに無関心なわけではないものの、その多忙さから必然的に子育てはお母さんが一手に担っており、志望校の相談や模試の結果報告などは全てお母さんからお父さんにされていました。
B君自身も受験勉強で忙しくなっていくにつれて、お父さんと会話する時間はますます減っていき、お母さんとの心理的距離ばかりが近いというアンバランスな状態が続いていました。
そして私から見たこの頃の彼の印象は「精神的にちょっと幼いな」というもの。
ところが、授業も宿題も真面目に取り組んでいるのに、なかなか結果に結びつかない日々が続いていた小6の秋、お母さんはふと「父子の関係を改善しなければ」と思ったそうです。
理屈ではない、母親の直感ですね。
そこでお母さんはいつも自分が報告していた模試の結果を、B君の手で直接お父さん報告するように言い、そして
「〇〇中学を受けます」
とお父さんに宣言させました。
お父さんは元々口数の少ない方だそうですが、
「頑張っているんだな。応援しているよ」
と言葉をかけてくれたそうです。
そこからB君の急成長が始まりました。
勉強への取り組み方が主体的になり、自分で考え工夫している様子がはっきりと分かるようになったのです。
質問もしつこいほど食い下がり、「曖昧なままにせず理解するぞ!」という意識を持っているのが伝わってきました。
自信が精神年齢を押し上げる。自信とメタ認知能力の関係
精神年齢の高い子は、自分を客観的にとらえコントロールする力に優れています。
そして自分を客観的にとらえる力を「メタ認知能力」と言います。
子どもから大人へ成長していくのは、まさにこのメタ認知能力を高めていくこと。
感情のまま泣いていた赤ちゃんも、徐々に物事を理解し、しだいに自分自身をコントロールできるようになっていきます。
そして中学入試で難関校を目指せる子はメタ認知能力が高い子なのです。
それは難関校の対策では基礎学力や理解力の高さに加えて、より深い部分に下記のような力が必要になるからだと思います。
・ミスをしない力、ミスをしてもすぐに気づき修正する力
・良い結果でも悪い結果でも、必ず原因を考える力
・気分に流されず、やるべきことを淡々とやりきる力
いずれも自己コントロールを求められるため、メタ認知能力を必要とするものばかりです。
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メタ認知能力が高い子は自信がある
メタ認知能力の高い(精神年齢の高い)子にネガティブな子はあまりいません。
やたらに自信があるという意味ではなく、冷静に自分の実力を把握していて、たとえ今はできなくても、どうすればできるようになるのかの筋道が見えるので、無駄に落ち込む必要がないのだと思います。
逆にメタ認知能力の低い「精神年齢の低い子」は感情の振れ幅が大きく、たとえば模試で良い成績を取ればすぐに調子に乗ってしまいますし、逆に悪い成績を取るとガクッとモチベーションが下がってしまいます。
自信がないとメタ認知できない。メタ認知できないと成績が伸びない。
自分を客観的に見つめるのは怖いものです。
特に中学受験という高い壁に立ち向かう場合には、授業、宿題、テストや模試などで、否応なく点数化され、順位をつけられ、他者比較が繰り返されるのです。
常に上位にいられる「天才」には心地よい環境でしょうが、そうでない子たちにとっては心を削られるような日々です。
大人にとっても「できない自分」を直視するのは怖いこと。
まして小学生の子どもにとって、どれだけ大変でつらいことか・・・。
しかし成績を伸ばすためには自分を客観的に見つめる作業は避けては通れません。
なぜなら、自分の足りない部分を知り、そこを一つ一つ丁寧に埋めていくことでしか成績は上がっていかないからです。
メタ認知能力をあげるために必要なものは「自信」
え、メタ認知能力が高いから成績が高くなり自信があるのでは?と思いますよね。
たしかにそれも一面です。
しかしB君のような「頑張っているのに成績が伸びない子」に関して言えば、まず必要なのは自信なのです。
先程も述べたように、成績が振るわない子にとって「できない自分」を客観視するのは怖い作業です。
そこでその怖い作業に立ち向かう原動力となるのが「自信」なのです。
尊敬する父親がB君に与えた自信
先程のB君は、心理的に距離があったお父さんとしっかり向き合うことで、
「お父さんが応援してくれている」と明確に分かり、
「頑張っているんだな」というお父さんの言葉で
日々の努力を認められたと実感することができました。
そのことがB君に揺るぎない自信を与え、勉強への取り組み姿勢を根本から変えました。
そして成績はぐんぐん伸び、中学入学後も成長を続け学年トップをキープするほどの超優等生へと成長したのです。
親子の信頼関係が自信を与え好循環を生み出す
下の図のように、自信が高まることでメタ認知能力が上がって勉強の質も向上し、成績が上がるのです。
そして成績が上がることでさらに自信がつきます。
この好循環に乗ってしまえば既に受験には勝ったも同然。いわゆる上位生の子たちはこの好循環に乗ることができているのです。
しかしこの循環は、悪循環にもなりえます。
つまり自信を失えばメタ認知能力も下がって成績も下がり、さらに自信を失っていく。
まさに負のスパイラルです。
負のスパイラルに陥らないよう細心の注意を払い、もし陥ってしまったらなるべく早く抜け出せるよう、大人は子どもをよく観察し適切なサポートを心掛けましょう。
子どもは皆、お父さんお母さんが大好き
生意気に見えても小学生はまだまだママパパが大好きな子ども。
その大好きな人に認められる経験の積み重ねこそが、お子さんに確固とした自信を与えるのです。
日々の忙しさの中で、私もつい余裕を失いそうになりますが、二人の息子たちに自信という宝物を与えられるよう、温かい眼差しと言葉を贈っていきたいと改めて心に刻みました。
【参考文献】