コロナ禍以降、ますます中学受験人気は高まる一方ですが、中学受験に足を踏み入れるのであれば、まずは本当にお子さんにとって必要かどうかを考えてみてほしいと思います。
そこで今回は中学受験をすることのメリットとデメリットを、元塾講ママの視点から述べてみました。
中学受験は楽ではない。子どもへの強いストレスは不可避
前提として、中学受験の勉強は量も質も小学生にとって過酷なものです。
私が塾講師として働き始めた当初、中学受験経験の無かった私はそのテキストを見て大変驚きました。
国語は大学受験かと思うほどの文章の長さと語彙
算数はどう見ても方程式や連立方程式で解くしか考えれれない問題
理科は自分が中学で学習した内容と酷似
社会の歴史は大学受験の日本史の基礎レベル
どの教科も想像以上にハイレベルで、「本当に小学生がこれを解くの!?」と信じられませんでした。
通常授業で使うテキストでこのレベルですから、さらに御三家レベルでは信じられないほどの難問です。
と同時に「自分も中学受験を経験したかった!」と強く思いました。(どう考えても経済的に無理でしたが)
中学受験のメリット
このように、小学校での学習内容と大きく乖離した学習を求められる中学受験。当然「ふつうの小学生」にとっては負荷が非常に大きいのです。
しかしだからこそ中学受験にはメリットもあります。
メリット① 子どもに合った校風や学力レベルの学校に通える
私立学校はその校風がそれぞれ個性的。
制服が無く髪を染めるのも自由な学校から、割と非情に退学となる厳格な校風の学校までさまざまです。
また国際教育に力を入れていたり、大学の研究室並みの実験設備を備えた理系に強い学校であったりと、校風がハッキリしているからこそ、子どもにピッタリの学校を選ぶことができます。
また学力が近い生徒が集まりますから、上位校ではハイレベルでハイスピードな授業を、中堅校や難易度の低い学校ではレベル別の少人数クラスで細やかな指導をするなど、その子に合った授業を受けることができ、学ぶ楽しさを十分に感じることができます。
特に勉強ができすぎて小学校で「浮きこぼれてしまうタイプ」のお子さんには、ぜひ中学受験をさせてあげてほしいと思います。
メリット② 最難関校の選択肢が多い
首都圏の中学受験で私立最難関校と言われる御三家。男子の開成・麻布・武蔵で高校での募集があるのは開成のみ。
女子御三家の桜蔭・女子学院・雙葉はいずれも高校での募集がありません。
一方高校受験では最難関校は筑波大学附属駒場や学芸大学附属などの国立高校、都立では日比谷や西など、あとは早稲田や慶応の附属高校です。
私立や国立の多くは中学でも募集するため、高校受験の定員は少なく、たとえば開成では中学受験では300人の定員に対し、高校募集では100人の定員です。
私立よりも格段に学費が安く人気の公立中高一貫校でも、御三家との併願もされる都立小石川や都立武蔵などは高校募集の無い完全中高一貫校です。
他の都立一貫校でも高校募集停止の動きが進んでいます。
メリット③ 当日の試験の点数のみで客観的に評価される
面接や調査書の提出を求める中学校も中にはありますが、それでも内申点の割合の高い公立高校入試に比べると、当日の学力でほぼ決まるのが中学受験です。
都立高校の入試で重要な要素になる内申点は、体育や美術などの実技教科は2倍で計算されたり、部活や委員会などの活動も重視されたります。
つまり、オールマイティに全教科得意で、さらに仲間を巻き込んで何かを成すような、知力とリーダーシップを兼ね備えた生徒像が難関公立高校では求められます。
したがって「勉強は圧倒的にできるけれど、それ以外は苦手」というタイプには、高校受験で力を発揮するのが難しいといえます。
中学受験のデメリット
一方でデメリットもあります。それは先に述べたそのハイレベルな学習であることと、小学生の受験であることが理由。以下、具体的に述べていきます。
デメリット① 小学校で優等生だった子も中学入学後は「ふつうの子」になってしまう
最難関校では各小学校のトップの子達が競い入学してきます。
そして難関校には「天才」としか言いようのないほど突出した子が必ずいます。
そしてそんな天才を目の前にすると、今まで自分を天才と思っていた子は、あたかも自分が凡庸なように劣等感を感じてしまうのです。
その結果、中学入学時点では全員が東大を目指せるほどの頭脳にもかかわらず、いつの間にか「落ちこぼれ」になってしまう子が出てきてしまいます。
そもそも大学受験は全国から集まる猛者が相手。
たとえ学校の中で「ふつう」であったとしても、マイペースに着実に勉強を積み重ねれば良いだけです。
しかし中学受験で偏差値や学力のみを軸にした学校選びをしてしまうと、中学入学後トップでいられなくなったときに過度に自己否定しまい、最も大きく成長するはずの大切な時期を潰してしまいかねません。
偏差値だけを軸にした学校選びがいかに危険かということです。
デメリット② 勉強の負担が大きく勉強嫌いになる恐れがある
中学受験で問われる内容は冒頭でも述べた通り、小学校での学習内容を逸脱しています。
小学校のテストでは毎回100点であってもそれは中学受験では全く通用しません。
特に大手塾のカリキュラムは基本的に上位層に合わせかなり速く宿題も多いため、余裕のある生徒にとっては「楽しく刺激的な勉強」であっても、それ以外の子には一度つまづくと非常に苦痛なものになってしまいます。
また大規模教室ではレベル別にクラス分けをしますが、下のクラスになってしまうとベテラン講師はあまり担当せず、生徒のモチベーションも低いので、活気ある授業にはなりにくいのが現実です。
宿題の管理をしたり、つまづきがあれば復習を手助けしたりして、自信を失わず最後まで走りきれるよう、親は子どもにしっかり寄り添いサポートすることが重要です。
中学受験はゴールではなくスタート。中高で充実した学校生活を送るには、絶対に子どもを勉強嫌いにしてはいけません。
デメリット③ 親が熱くなりすぎることで、子どもを追い詰めてしまう
デメリット②で述べたように、親のサポートが欠かせないのが中学受験ですが、それゆえ親が過度にプレッシャーをかけてしまい、子どもを追い詰めてしまうこともあります。
小学生の子どもにとってやはり親の存在はとても大きいもの。
大好きなお父さんやお母さんに喜んでほしくて勉強も頑張るのです。
しかし、そんな親に模試の結果で落胆されたり、他の子と比較されたりしたら、どんなにか子どもは傷つくでしょう。
親は「子どもに失敗させたくない」からこそ、どんどん中学受験にのめりこんでしまいますが、
それが本当に子どものための言葉なのか、
自分のコンプレックスや承認欲求を満たすための中学受験になっていないか、
塾の面談などで第三者の声に耳を傾け、冷静さを失わず、子どもの心を大切に最後まで寄り添ってあげてほしいと思います。
まとめ:中学受験を目的とせず「子どもの人生の通過点」であることを忘れない
中学受験は過酷かつ長期的な家族総出の一大プロジェクトです。
過酷ではありますが、それを乗り越えることで子どもが大きく逞しく成長するのは間違いありません。
だからまずは、親は子どもがいかに大きなものに立ち向かうのかをよく知り、中学受験のメリットもデメリットもよく見極めた上で、子どものための選択を全力でサポートしてあげてほしいと思います。