国語は、得意な人にとっては「分かる」のが当たり前で、なぜ他の人が正解できないのか不思議に思うものです。一方で「勉強の仕方がわからない」「成績の上げ方がわからない」と、悩む人が4教科の中で1番多いのも国語かもしれません。
ではどうすれば国語の成績を上げることができるのでしょうか。
今回は、私が中学受験塾の講師になって半年の頃、前任者から引き継いだクラスの平均偏差値をいきなり10上げた経験から、国語力の上げ方について考えてみたいと思いす。
講師1年目 伸びしろしか無いクラスをいきなり任される
私が中学受験塾に講師として入社してまだ半年の頃、ある先生(K先生)が諸事情により退職されることに。そこで年度途中でしたが、私がK先生が担当していた小5の国語クラスを引き継ぐことになりました。
このクラスの国語の平均偏差値は45。ただ、塾のクラス分けは4教科総合(かつ算数が比重重め)で判断される場合が多いため、国語の成績は特にブレ幅が大きく、下は30台から上は58とかなり幅のあるクラスでした。
しかもK先生はとても面白く楽しい授業で大人気だったため、急な担当変更に不満を持つ生徒が多くいました。
「私は君たちの『志望校合格』のために来た」
初授業。生徒たちから向けられる「なんでK先生じゃないんだ」
という不満げな視線を感じながら、私は宣言しました。
「私がこのクラスを担当することになったのは、君たちを志望校に合格させるためです」
(目が点になる抜かれる生徒達)
私はクラストップの女子Mさんに視線を向け話を続けました。
「このクラスで国語が得意だと思っている人は?」
(Mさんと何人かががおずおずと手を挙げる)
「では、あなたの偏差値は志望校に足りている?今のままで合格できる?」
「それは・・・」とMさん。
(Mさんの志望校は最難関共学校)
続いて容赦なくトドメを刺す私。
「今のままでは全員、志望校合格は無理です。」
静まり返る生徒達。
ヤバい先生が来てしまったと思ったことでしょう。
しかしまだ私の話は続きます。
「みんながK先生のことを大好きなのは私も知っている。楽しい授業だったよね。
でも、それはこれまでの話。君たちは受験生。行きたい学校がある。」
(沈黙)
「国語が嫌いな人はいる?」
(手が挙がらない)
「国語が苦手な人は?」
(パラパラと手が挙がる)
「苦手でも嫌いじゃない。いいじゃない。これはK先生の楽しい授業のお陰だね。これから本気で受験勉強に入る土台ができてるってことだよ。」
(生徒たちの顔つきが少し変わる)
「さて、ここから本題。
1か月後にある塾内模試で、全員の国語偏差値を最低でも5上げます。
そしてクラス平均10上げます」
(信じられない、という表情の生徒達)
「無理だと思っているでしょう。でもできます。
なぜなら、みんなの模試の成績・小テストの成績・宿題の状況・授業態度を分析した結果、すぐに偏差値を5ptは上げられる伸びしろが全員にあると分かったからです」
(ザワつく生徒達。期待感が生れつつあるのが伝わってきます)
「とにかく私の授業についてきてください。必ず成績が上がります。」
「では授業を始めます。」
なんだか二月の勝者みたいですが、これを本気でやりました。
もちろんハッタリ9割。入社1年目のド新人でしたから。
国語の成績を短期で上げるために何をしたのか
ハッタリをかました私ですが、これは必ず結果を出そうという決意でもありました。
若かった・・・
とはいえハッタリだけでは成績は上がりません。
論理的に戦略を練り上げて行動に落とし込みました。
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは心理学用語で、教師の期待によって学習者の成績が向上すること。教師期待効果とも呼ばれます。
初回授業で私が「必ず成績が上がる」と宣言したのはこのためでした。
生徒に語ると同時に自分に対しても語ることで、ある種の自己暗示をかけたのです。
クラス全体で「成績が上がるに違いない」という空気を生み出し、ピグマリオン効果を狙いました。
徹底的な情報分析
生徒たちに言い放った、
模試の成績・小テストの成績・宿題の状況・授業態度を分析した、
というのは事実です。
自分が新人で経験不足であるという自覚があったからこそ、まずは生徒に関する情報を徹底的に頭に叩き込みました。
目標と現状とのギャップ分析→行動を具体化
漢字、語句知識、物語文、論説文、文字が汚い(不正確)、語彙力不足
など国語が伸び悩む理由はいくつかパターンがあります。
一人ひとり課題を洗い出し、志望校とのギャップを分析。そのギャップを埋めるため、
最終目標(志望校合格)→中期目標(半年後の偏差値)→短期目標(1か月後の模試の偏差値)→日々のタスクと言った感じで、最終目標から逆算して具体的な行動に落とし込んでいきます。
特に全員に共通していたのは漢字テストの詰めの甘さだったので、まずはここを徹底的にテコ入れしました。
読解問題の「読み方」「解き方」「答え方」を徹底指導
ベテラン講師でも実はこれができない人が多い。
「元々国語が得意で、特別な努力しなくてもいつも成績が良かった人」に多い気がします。
得意であることと教えるのが上手いかは別問題。
算数に解法があるように、国語にも解法があります。
基本的な解法をマスターするだけでも「普通よりちょい上」までは簡単に成績を上げられます。
宿題の徹底管理
宿題をどの程度管理・指導するかは塾や講師によってかなり差があります。
他塾から転塾してきた生徒の話を聞いても、ほとんどチェックされないという塾(講師)も珍しくなく、これでは成績も上がるはずがありません。
前任のK先生は宿題のチェックこそやってはいましたが、内容面で生徒への対応が甘く、大半の生徒は、授業前日にまとめて適当に問題を解いてくるだけの、非常に粗い宿題状況でした。
そこで私は日割りのスケジュールで細かく指示。
たとえば、漢字は前日にまとめてやらず、毎日一定量進め、前日には復習をするよう指示しました。
毎週の授業後「ひとり会議」
毎週授業後に、生徒一人ひとりの
・宿題の提出状況や実施クオリティ
・漢字テストの得点
・小テストの得点
・授業態度
をデータに残し、課題を分析。
そこから次週の授業で身につけさせるべき内容を考え、次回の授業へ。
要は自分の指導についてのPDCAサイクル。
1か月後の塾内模試の結果は
結果は宣言通り。
本当に1か月後の塾内模試で、
全員過去最高偏差値をマーク。
クラス平均は56に。(+11pt)
特に私が初回授業で少々煽ったMさんは、今まで偏差値60を超えたことが滅多に無かったのですが、この時初めて67に達することができました。
それまで「自分は国語より算数が得意」と思っていたそうですが、
この時から「自分は国語が得意なんだ」が口癖に。
その後も成績は上がり続け、最後まで国語偏差値は平均70をキープし続けました。
Mさんが入試までクラスの国語を引っ張り続けてくれたお陰で、
このクラスは常に国語が平均よりも高く、成績優秀な教室として表彰されることもありました。
まとめ:国語は「正しい方法」で勉強すれば必ず成績が上がる
「正しい勉強法」というのは、要は基本を疎かにしないこと。
当たり前のことですが、意外とこの国語の「正しい勉強方法」をきちんと体系立てて指導できる人は少ないようです。
(特に「中学受験の国語」なのに、「大学受験の現代文」の読解方法をそのまま適用してしまっている人が多いんですよね・・・)
次回は中学受験の国語の学習法について具体的に書いてみたいと思います。