2023年の中学受験が一段落し各塾や出版社などから様々なデータが出てきました。いずれのデータも中学受験の人気が年々高まっていることを示しており、中学受験塾に通い始める時期の低年齢化も進んでいるといいます。そこであえて今回は元スパルタ塾講ママが目指している、塾無し中学受験について考えてみたいと思います。
「『塾なんていらない子』に育ってほしい」塾講師時代から一貫した思い
元塾講師の私ですが、実は塾の存在は不可欠と思っていません。
その考えは、塾講師時代から一貫して変わらないものです。
その理由を説明してみたいと思います。
少子化の必然性。生徒を「塾依存」させないと塾は生き残れない
私の勤めていた塾は、中学受験を目指す小学生や高校受験を目指す中学生、私国立中高一貫生など、様々な子どもたちを対象とした複数のコースや個別指導塾を持っている大手企業でした。
少子化への対応から必然的に、受験が終わってもなるべく長く塾に生徒を引き留めたいと考えるのは、どの塾企業も同じです。
中学受験専門塾が大学受験予備校と提携したり傘下に入ったりする場合もあり、未就学児から高校生まで長く顧客でいられるよう「長いエスカレーター」を用意する塾企業がどんどん増えています。
下記はその例です。
- SAPIX:小学部・中学部あり。代々木ゼミナールのグループ。
- 四谷大塚:東進ハイスクールのグループ。
- 早稲田アカデミー:小学生・中学生・高校生の各種コースあり。
- 浜学園:駿台と提携し、合弁会社「駿台・浜学園」を運営。
- 栄光ゼミナール:小学生・中学生・高校生対象の各種コースあり。Z会グループ。
- ena:小学生・中学生・高校生対象の各種コースあり。
大手塾で完全に中学受験のみに特化しているのは、私の知る限り日能研くらいではないでしょうか。
受験が終わっても塾には「進級」ノルマがある
企業の運営にはあらゆる「予算」が組まれます。塾会社も例外ではありません。
合格実績は勿論重要ですが、それ自体が売り上げに直結するわけではなく(実績のある塾に入塾者は向かうので間接的には関係します)、各教室には
- 在籍者集:月ごとに集計する各校舎の在籍者数
- 各講座(科目)の受講者数:1科目から受講可能な塾の場合も、塾的にはなるべく多く受講してほしい。
- 季節講習の受講者数:正規の塾生は100%の受講を目指し、外部生になるべく多く入塾してほしい。
- 季節講習の特別講座の受講者数:苦手克服を目指す単元別の講座が開講されるので、季節講習のレギュラー授業に加えて、特別講座もなるべく多く受講してほしい。
- 志望校対策講座の受講者数:小6秋ころには「御三家対策」などの特別講座が開講されるので、該当する生徒に受講させるのは各校舎の「義務」。
- 進級者数(進級率):受験が終わった生徒が卒業(退塾)しないよう説得し、次のコースへと進ませる。中学受験が終わったら、大学受験に向けて中高一貫校向けコースを案内するなど。
といった予算が本部から割り当てられます。
特に、受験が終わった2月や3月に生徒が卒業すると、ごっそり抜けることになるので、進級率は次年度の在籍者数に大きく影響します。
したがって塾としては、全員に進級してほしいのが本音でしょう。
自走モードに入った生徒には塾は不要
生徒を志望校に導くためには、「自走モード」にいかに乗せられるかがカギです。
私は授業で生徒たちに度々伝えていたのが、
「『塾なんて必要ない』と思えるくらい勉強するようになったら第一志望に受かるよ」
という言葉。
宿題をイヤイヤ「やらされている」うちは、受験が他人事。
6年間学校に通うのは自分自身なのだから、親に言われたからではなく、自分の意志で「受験生」にならなくてはいけない、そう伝え続けたのです。
(そんな私の考えとほぼ完全に一致するのが上記の 予約殺到の東大卒スーパー家庭教師が教える 中学受験 自走モードにするために親ができること です)
実際自走モードに入れた子は、しっかりと受験で結果を残し、中学進学後も順調に成長し続け、大学受験でもしっかり結果を残しています。
受験勉強では自立した学習を促し、
受験が終われば「これからも塾に通いましょう」と伝えなくてはいけない。
もちろん仕事ですからある程度は割り切っていましたが、心の奥底で「この子にはもう塾は必要ないはずなのにな・・・」と思っていました。
塾依存しない中学受験を目指したい
こうした塾の営業の実態を知るからこそ、自分が親になった今、我が子の受験では
なるべく営業的側面に巻き込まれたくない
と思っています。
もちろん塾の持つ圧倒的な情報力や効率的なカリキュラムは大きなメリット。
それらを必要に応じて適宜利用することは無駄だと思いません。
ですが、あまりに早い時期から塾の中にどっぷりつかってしまうと、どうしても塾の営業的な思惑によって、本当は必要のないものまでも必要だと思いこまされてしまう恐れがあります。
たとえば、季節講習の際には、本当は自宅学習で十分なのに「苦手分野の克服のためにこの講座が必要!」と推されて、さほど必要の無い講座までも勧められることはままあります。
通塾時間とて積もり重なればばかになりません。自宅でもできるのに、わざわざ塾まで出向いて一斉授業を受けるのは、(特に自走モードに入った子の場合は)かえって非効率的というのが、私の正直な意見です。
塾無しでも受験対策できる環境が整ってきた
コロナ禍以降急速に各塾のオンライン講座の環境が整ってきました。
また、Z会や進研ゼミといった通信教育でも中学受験対策講座の内容が充実してきています。
こうした状況を考えると、基礎学力や学習習慣といった学ぶためのベースを整えられれば、塾に通わずとも十分中学受験で戦えるのではないかと感じます。
どこまでいけるかは分かりませんし、「塾なし」に頑なにこだわるつもりもありません。
ですが、せっかく中学受験に関する知識をある程度持った状態からスタートできるので、「目指す受験生像(自走モード)」から逆算し、今からできることに取り組み、なるべく塾とは距離を保ちながら中学受験に挑戦してみたいと考えています。