長男の通うピアノ教室「一音会」では、夏の「発表会」、冬の「ピアノトライ」という2回の演奏発表の場があります。ichionkai.co.jp
冬の「ピアノトライ」で先生方の印象に残った演奏をした生徒は「ル・コンセール」というミニコンサートに出演することができます。
今年は2月の上旬に「ピアノトライ」、その数日後に「ル・コンセール」への出演決定が決まり、ピアノトライのちょうど一週間後に出演しました。
そして今回、この舞台に臨んだ息子を見て感じたのは、「本番前にしっかり緊張すること」がいかに大事か、ということでした。
- ピアノを習う最大の目的は「緊張と上手く付き合えるようになること」
- 本番が近づくにつれて緊張が増す長男
- 「あなたは今緊張しているのよ」と伝える
- 緊張するのは悪いことではなく、むしろ良いこと
- 結論:親が練習を全力でサポートすれば子どもは自ずと開き直る
ピアノを習う最大の目的は「緊張と上手く付き合えるようになること」
情操教育、指先を使うことで脳を発達させる、耳を鍛えると将来語学学習でも有利、など楽器を習うメリットや目的は様々ですが、我が家で子どもが楽器を習う最大の目的、それは「場慣れ」。つまり、
たった一人で舞台に立ち、やり直しのきかない本番を経験することで、
人生の様々な場面でも、緊張に飲まれず実力を発揮できるようになってほしい、ということ。
とにかく慎重な性格の長男が、将来なにかしらの大舞台で緊張しすぎて困らないよう、場慣れさせたい、と夫婦の意見が一致しピアノを習っています。
本番が近づくにつれて緊張が増す長男
本番が近づくにつれて、緊張感から長男のメンタルが不安定になることがたびたびありました。
たとえば、
・無性にイライラしている
・「何もかも全部嫌だ」と投げやりになる(例:ご飯食べない!お風呂に入らない!)
・急にメソメソ泣き出す
といった感じ。
最初はなんでこんなに我がままばかり言うのかと、こちらもついイライラしてしまっていました。しかしよく観察してみると、息子がこうした状態になるときは、決まって
「本番まであと〇〇日だね」
と私が何気なく言った後だと気づきました。
息子を焦らす意図は全く無かったものの、知らず知らずのうちに緊張させてしまっていたようです。
「あなたは今緊張しているのよ」と伝える
塾講師時代にも、模試や入試本番を控えて緊張する子どもたちをたくさん見てきました。
本番2週間前から緊張しすぎてお腹が痛くなってしまう子
普段ヘラヘラと緊張感が全く無かったのに、本番になって急に頭が真っ白になり、普段ならありえないミスを連発する子・・・
緊張を上手くコントロールできず飲まれてしまって実力を発揮できない、ということは小学校高学年では珍しくありません。大人ですらしばしばあります。ましてやまだ5歳の子どもならば、緊張と上手く付き合えないのは当たり前。むしろ緊張という概念すら知らないかもしれません。
そこで私は繰り返し繰り返し次の3つのポイントを強調しながら、
「今のあなたは緊張しているんだよ」と息子に伝えることにしました。
ポイント1:「ソワソワして嫌な感覚」=「緊張」
本番の2週間ほど前から何度か緊張の波が押し寄せるようで、そのたびに「本番が近づいてきたから緊張しているからイライラしているんじゃない?」と私は息子に繰り返し伝え続けました。
不安・恐怖・緊張、こうしたネガティブな感情は漠然と自分の内側に抱えていると、どんどんその感情に自分自身が飲み込まれてしまいます。
しかし、「感情に名前を付る」「何に対してそのように感じているのかを明確化する」ことで、感情から一歩距離を置くことができます。
よく「語彙が乏しい子どもはキレやすい」と言いますが、まさに自分の感情を言葉でとらえたり、相手に説明できないことから、感情のコントロール不可能=キレる という状態を引き起こすのでしょう。
息子には、まずは自分の中にあるモヤモヤとした感情に名前を付け、一歩引いて捉える手助けを心掛けました。
ポイント2:大人だって緊張する
「お母さんもお父さんもよく緊張するんだよ」という内容を、たとえば、
・仕事で大勢の前で話さなくてはいけない場面
・初めての人と話さなくてはいけない場面
といった具体的なエピソードを添えて伝えました。
幼い子どもは、身近な大人である親を「何でもできる存在」と思いがちです。しかし、そんな親であっても、子どもと同じように緊張し、時には逃げ出したくなることだってある、とちょっと情けない姿を見せると、かえって子どもは安心します。
「お父さんやお母さんだって緊張するんだ。それなら自分が緊張するのは当たり前だ。」
と緊張することが特別なことではない、と思えるのでしょう。
子どもの気持ちに寄り添うためには、親自身のありのままの姿を見せることも大事なのではないかと思います。
ポイント3:失敗してもなんてことはない でも練習すれば成功する確率が上がる
長男は「失敗したくない」という思いがとても強いようです。これは0歳くらいから片鱗を見せていた性格なので、もはや生まれつきの気質なのでしょう。私自身も物心ついた頃から長男と似たような性格でした。
こういうタイプには「緊張するな」といってもあまり意味が無いように思います。
そこで、
「緊張しても失敗しても大丈夫 そんなことで誰も怒らない」
「でも練習をたくさんすれば失敗する確率は下げることができる」
「だからとにかくしっかり練習しよう!」
このように声をかけ、緊張している時こそ練習を念入りに行いました。
当たり前ですが、何事も練習を重ねれば上達します。上達し「上手く弾けた」という経験が増えるほど、自分の中で「本番でも成功する」というイメージを描きやすくなります。
「良いイメージを描くことが成功へと繋がる」というのは様々な分野で言われる真実でしょう。
とはいえイメトレをするのは最後の最後。まずは練習ありき。
塾講師時代には「緊張している暇があったらとにかく過去問を解け」とスパルタ式に受験生に言い続けた経験が、子育てでも生きているように感じます 笑
緊張するのは悪いことではなく、むしろ良いこと
「緊張しないことは実は怖いことなんですよ」
これは息子のピアノの先生に言われた言葉です。理由を尋ねると、先生ご自身がリサイタル前に、
「『今回はなんか緊張しないなー』と余裕を感じる時ほど、本番で大きなミスをするものなんです」
とのこと。むしろ上手くいくときは、
「本番前までとことん緊張しまくって『最後には開き直るしかない!』という状態のとき」
なのだそうです。
この言葉を少し深堀して考えてみました。
開き直れるのは「極限まで緊張した後」だから
緊張もせずただ開き直るのはNGで、それは浮かれているだけだから本番で大きな失敗に繋がります。
しかし「本番で失敗しないように」と真剣に考えていれば、練習段階では「まだあれもこれもやらなくては」とできないことばかりを考えて焦り緊張してしまう。それでも真剣に練習を重ねてきたのであれば、本番では「もうやれることはない」と自然と思えるので、ただシンプルに持っている実力を発揮するのみとなる。
それが開き直る、という状態なのだと私は考えました。
結論:親が練習を全力でサポートすれば子どもは自ずと開き直る
2月某日「ル・コンセール」本番、緊張でガチガチの状態で舞台に上がり、スタッフに誘導されようやく椅子に座った息子。
しかしピアノを弾き始めた瞬間、一気に表情から緊張が消えたのが分かりました。
そして最後まで見事にノーミスで演奏終了。
まさに「極限の緊張から開き直った」のでしょう。会心の出来でした。
親の私から見ても、現時点の実力でできることは全てやりきった、と言えるほど練習してきたと思います。
帰宅後は、恒例のケーキでお祝いし、家族皆で素晴らしい演奏を褒め称えました。
そして、しばらく興奮が冷め止まぬ様子の息子の口から出たのは、
「いっぱい練習したから、今日は一番良い演奏ができたよね!」
という言葉。
まさにこれぞ習い事の醍醐味。息子の心の成長を実感した瞬間でした。