元塾講ママのシンプル知育

元中学受験塾講師。5歳と2歳の息子たちの「塾無し中学受験」を目論んでいます。

【書籍紹介】「人気講師が教える理系脳のつくり方」 から考える幼児期の学習法

現在5歳と2歳の息子たちの、将来的な中学受験を見据えて知育・家庭学習を進めている我が家ですが、中学受験塾で10年間生徒達を指導してきた経験から、受験における算数の重要性は人一倍強く感じています。

とはいえ、自分も夫も文系で算数がさほど得意でも好きでもありません。

(二人とも歴史が大好きです)

そのため私は、算数力を伸ばすための幼少期の過ごし方については、様々な本などを読み漁って学んできました。

その中で最も私の心に刺さったのがこちらの本。↓↓

 

知る人ぞ知る名門中学受験塾「エルカミノ」の代表で生粋の理系人間である、村上綾一先生が書いた一冊。出版は10年以上前ですが、私のような文系人間にはちょっと想像しにくい理系の人の思考回路が、明晰な文章で端的に説明されており、今でももちろん通用する「子どもの能力を伸ばすためのヒント」がたくさん詰まっています。

 

理系の頭脳とは何か

理系の頭脳とは、

・筋道を立ててものごとを考える論理的思考力

・無駄なことを省く合理性

・一つのことをじっくりと考え抜く根気強さ

・さまざまな角度から問題を見る力

・難問に直面しても諦めない粘り強さ

・複雑に絡み合った問題を正確かつスピーディーに処理する能力

これらの能力を合わせた人間的総合力のこと、と冒頭文で著者は述べています。

 

つまり「算数や理系科目が得意」という狭義の能力ではなく、全ての学びに通じる総合的かつ土台となる能力を指すのです。

 

 

理系脳を育てる秘訣

本書で紹介されていた、理系脳の育て方や理系脳とは何かの本質に切り込んだ内容で、特に一般常識とは違うな、と私が感じた点をご紹介します。

 

理系脳≠ひらめき力

算数が得意な子を傍から見ていると、あたかも瞬時に解法をひらめいているように見えますが、著者によるとそれは大間違い

算数の得意な子は、前にやったことのある問題から「だいたいこのパターンで解けるだろう」とあたりを付けて解いている、と言います。

つまり、たくさん問題を解き、さまざまな解法のパターンを知り、それらを多くの問題に応用する経験(=試行錯誤する経験)をたくさん繰り返してきた子ほど、このあたりをつけるのが上手く、一瞬にしてできるのであり、あたかも「何もないところから一瞬でひらめいた」かのように、周りには見えるのです。

ここで重要なのは、この理系脳はけっして生まれつき与えられたものではなく、人一倍多くの試行錯誤を経験してきた結果、ということです。

もちろん幼児期の早い段階で数に興味を持つ子は一定数います。しかしこうした子もいきなり中学受験のような難問を解いたわけはなく、最初は1,2、3・・・と身の回りの物を数えはじめ、簡単な足し算・引き算を知り、段階を踏んで徐々に難問を解くようになったのです。

つまり早くから算数の世界を知ったことで、「試行錯誤する経験」や「正解する楽しさ」をより多く知っている、ということなのでしょう。

 

したがって、たとえ既に算数が苦手になっている子であっても、本人のレベルに合った問題からスタートし徐々にレベルを上げながら数多く問題をこなしていけば、着実に実力がついていく、と著者は述べています。

これは理系コンプレックスを持つ文系の親御さんにとって朗報ではないでしょうか。

(私もこの点に大いに勇気づけられました)

 

算数を得意にしたいならどんどん暗算させる

「我が子は計算ミスが多い」とお悩みの親御さんたちの多くが、

「ちゃんと筆算しなさい!」と言います。しかし著者によるとこれは全くの逆効果

というのも、筆算と言うのは単純作業であるため、実はあまり頭を使っていないから。

一方、どんどん暗算するように子どもに指導していくと、たとえば、

36×15を計算する際に

「36×10」+「36×10×1/2(36×10の答えの半分)

といった、計算ミスの起こりにくい×10などの形になるべく式を変形し、計算を工夫をするようになるそうです。こうした解き方は純粋に「美しい」と私も感じます。

 

また、筆算をせず暗算で解き進める場合、

①途中計算の答えを一時的に覚えておき、

②次の計算を進め、

③後で再び計算に使う。

といった形で、頭の中で一時的に記憶を保持しながら、全体を見失うことなく(俯瞰的にとらえながら)問題を解き進める必要があるため、筆算と違い暗算は脳の機能を活性化させると言います。

たしかに大人でも、優秀な人の仕事ぶり見ると、優先順位をつけて効率よく処理していき、複数の業務を抱えていても落ち着いて淡々と作業を進める、という特徴があると感じます。

全体を見失うと人は不安になったりパニックに陥ったりしますが、「デキる人」は物事を俯瞰的に捉える力が高いので、どんな状況でもパニクらないのです。

よく「算数や数学なんて四則計算さえできればあとは必要ない」などと言われることがありますが、この算数や暗算で鍛えられる「効率的に解く力」や「俯瞰する力」は、一生モノの能力と言えそうです。

 

本当に理系が得意な子は国語もできる

「うちの子は理系だから国語ができない」と言う人がいますが、それはニセモノの理系です。

この一文を読んで、元国語講師の私は激しく膝を打ちました。

まさにおっしゃる通り!

そもそも真に国語力がある子は、たとえ最初は算数が苦手だったとしても、必ずそれなりのレベル(偏差値60以上)まで到達します。なぜなら、国語で安定して高得点を取るために欠かせないのは、算数力と密接な関りのある「論理的思考力」だから。

ですから、逆に受験勉強スタート時には「算数は得意だけれど国語が苦手」であったとしても、論理的思考を用いた正しい読解方法を学びさえすれば、算数が得意な子は国語力も高い水準に達します

それを証明するかのように、筑駒や灘といった最難関中学では国語でしばしば詩を出題します。詩は国語の中でもっとも問題を難易度高く設定できるジャンル。

私が考える、最難関校が出題する詩を読み解くために必要となる条件は、

・詩のルールを正しく理解している

・幅広い教養と生きた知識を充分に備えている

・詩独特の曖昧な表現を「自分の言葉」で明晰に表現できる

の3つです。

つまり、充分な知識を備えつつ、それらを論理的思考力によって適切に活用・表現する力。これぞまさに「優秀な頭脳」と言えます。

 

まとめ:幼少期には「試行錯誤」と「知る楽しさ」の経験が大切

本書を読み進めてきて、私は

・試行錯誤すること

・知識を得ること

この2つの楽しさを身をもってたくさん体験することが、幼少期には特に必要だと感じました。それこそが、将来どんな難問に出会っても学ぶ楽しさを失わないことに繋がるはずだからです。

そして学ぶことは受験が終わっても一生続いていきます。

つまり

学ぶことを楽しむ=人生を楽しむ

ということ。

本書では理系脳や算数力に限らず、広い意味での子どもの能力や学習法について述べられていました。気になる方はぜひご一読ください。

 

学習全般に関して分かりやすくまとめられたこちらも非常に参考になりました。

 

名作パズルが多いと聞くエルカミノのワーク。いずれ子どもと取り組んでみたいです。