元塾講ママのシンプル知育

元中学受験塾講師。5歳と2歳の息子たちの「塾無し中学受験」を目論んでいます。

【中学受験】埼玉入試スタート!最後は子どもの笑顔で終えよう!

1/10は首都圏入試の初戦、埼玉入試スタートの日。すでに合否発表の行われている学校もあると思います。

前受け、本番前の練習、押さえ校、と呼ばれることの多い埼玉(1/20からは千葉)入試。

しかし、ぜひ保護者の方にお願いしたいのは、

「合格したら、必ず一校は入学手続きを済ませてください!」

ということ。

ましてや、埼玉入試も千葉入試も受けずに東京入試のみというご家庭がもしあれば、どうかもう一度考え直していただきたいのです。

 

圧倒的に過密スケジュールな中学受験

私がこのように言う理由は、

2/1~2/3までの3日間(長くて5日間ほど)で、入試と合否発表を毎日繰り返すという超過密スケジュールで闘う東京(神奈川)入試は、全滅するリスクも実は高いからです。

こんな過酷な入試スケジュールの試験は他に無いと思います。

(だからそうならないように細心の注意をはらって入試スケジュールを組むわけですが・・・)

中学受験は早いと小1から、多くは小3の冬から受験準備が始まりますが、こんなにも長い年月をかけてきたにも関わらず、たった数日間という一瞬で終わってしまいます。

過度に圧縮された想像を絶する大きな負荷を、小学生の小さな心と体にかけるのが中学受験なのです。

 

※漫画二月の証左はに描かれる世界は、誇張一切なし!!超リアルです!!

 

 

 

 

 

全滅リスク①:体調不良

中学受験で全校不合格になるのは、実力や努力不足だけが原因ではありません。

現に私の教え子でも、1/31からインフルエンザにかかってしまい、2/1の大本命は高熱のためやむを得ず欠席、2/2、2,3もフラフラになりながら受験、結局東京入試では一校も合格が取れなかった子がいました。

中学受験特有の過密な入試スケジュールゆえに、回復が間に合わなかったのです。

成績優秀な生徒でしたし、長年努力してきたその子の気持ちを思うと、本当に心が痛みました。しかし子どもの順応力は大人が思う以上に高いもの。

進学先の埼玉の中高一貫校で充実した6年間を過ごし、某最難関私立大学に現役合格したそうです。

後に彼は、

「中学受験では悔しい思いもあったから、大学受験でリベンジする気持ちで頑張った」と話してくれました。

合格と喜びと不合格の悔しさ、その二つの経験が彼を大きく成長させたのだと思います。

 

全滅リスク②:2/1に生じた違和感を最後まで修正できない

これは御三家などの上位層で闘う子にしばしば見られるリスク。

御三家は基本的に2/1の一回きりしか入試がありません

(中学入試ではむしろ3回は受験可能な学校がほとんど)

中学受験に浪人はありませんから、一生に一度しか第一志望受験のチャンスが無い、ということです。

さらに、こうした上位層の子達は周囲からかけられる期待も非常に大きいもの。

「〇〇なら受かって当たり前」

などの言葉や無言の圧力を受けてきています。

つまり上位層の子にとって、2/1にかかるプレッシャーは計り知れないほど大きいものなのです。

 

小さな体にずっと蓄積されてきたこうしたプレッシャーは、突然その子の調子を狂わせることがあります。

そして恐ろしい事に、しばしば2/1の朝に起こるのです。

「自分はこれまで一度も緊張したことが無い」と言っていたようなタイプは特に要注意。

たった一度きりの第一志望校の入試を目前に、生まれて初めて感じる違和感、それが「緊張」と自覚できないことも珍しくありません。すると、

「なんだかいつものように集中できない気がする」

「ソワソワして落ち着かない」

という状態に陥ってしまうのです。

この自覚できない緊張状態は、著しくメタ認知能力を下げてしまうため、

いつもなら絶対に間違いないような基本的な問題で失点を連発してしまうこともあるのです。

まだ人生経験が浅く未熟な小学生の受験ゆえの大きなリスクと言えます。

jukukoumama.com

 

かつて指導した御三家志望のFくんはまさにその典型でした。

2/1の朝、受験校の門で送り出したFくんは、完全に緊張に飲まれ冷静さを失なっていたのです。

私はその時「これはかなりマズい」と感じました。

こういった場合を想定して、基本的に入試後は塾へ顔を見せに来る約束をしていました。(塾や教室によって対応は異なるかもしれません)

「もし今日の入試の出来が悪くても、それは緊張のせいで本来の実力を発揮できなかっただけ。明日は絶対に大丈夫!」

と勇気づけて、翌日の入試の送り出すのが塾講師の役目だからです。

しかしどうしても毎年一定数、この約束を無視してしまう子がいます。

その年はF君がそうでした。

結局F君はその後塾に顔を見せてくれることはなく、本来の調子を取り戻せないまま、2/1から2/5まで不合格発表が続きました。

 

私たち講師は東京入試の結果を残念に思いつつも、埼玉の合格校に進学ならば悪いようになるまい、と少しの安堵も感じていました。

しかしF君のお母さんから聞かされたのは

「埼玉の合格校には手続きをしていない。だから公立中学に進学します」

という予想外の事実。

 

最初から「埼玉校に進学するつもりは無い」と話し合って決めていたわけではないのです。もしそうなら、東京入試の受験スケジュールはもっと違ったものにしたはずです。

「落ちるはずがないと思っていた東京の学校にも不合格してしまった。しかし埼玉の合格校にはもう入学することができない」

という、他に選択肢が無いがゆえの進学先決定でした。

どうやら、埼玉受験校には非常に好成績で合格したため、

「これなら東京の同じ偏差値帯の学校に落ちるはずがない」と親御さんもF君本人も信じこみ、埼玉受験校に入学手続きしなかったのだそうです。

家族全体で冷静さを失っていたのでしょう。

全ての入試終了後、電話で最後に話したF君の憔悴しきった声が、今でも忘れられません。

 

こうしてF君は地元の公立中学へと進学していきました。

勿論公立中学への進学自体は私は否定しません。そういう選択をする生徒も少ないながらも見てきました。

けれども「まだ小学生だったF君がここまで傷つく必要があったのだろうか」という思いが今も消えないのです。

 

 

埼玉・千葉の中高一貫校への進学も前向きに検討してほしい

埼玉や千葉の中高一貫校「塾・予備校いらず」と言われるほど、とても面倒見が良く「入学後に生徒を伸ばしてくれる学校」もたくさんあります。学費も東京に比べると安い上、広大な敷地で伸び伸びと部活動に打ち込めたりもします。

もし埼玉・千葉合格校に入学手続きをせず、東京入試で想定していなかった不合格が続いた場合、受けられる学校を急いで探して受験するか、諦めて公立中学に進学するしかありません。

受験を続行する場合、日程が後になるほど難易度は上がっていきますし、受けられる学校も合格者もぐっと少なくなります。

よくよく考えれば埼玉・千葉の合格校の方がずっと偏差値や諸々の条件がマッチしていた、などと後から悔やんでも手遅れです。

 

子どもにとって「不合格」は親の想像以上の衝撃

「うちの子は危機感が無いから埼玉や千葉で練習はさせない。全部落ちたら甘い勉強しかしてこなかった本人の責任だから仕方が無い」

そう言う親御さんにもしばしば出会ってきました。

たしかに大人から見ると、小学生の頑張りには"甘い"と感じるところがあると思います。

ですが、それが子どもであり、中学受験というものです。

(そもそも大人であったも完璧な努力を長年継続できるものでしょうか)

 

子どもに危ない橋を渡らせようとする大人たちへ

大人は自身の受験や社会人経験から、つい小学生の子どもにも同じ水準の行動を求てしまいます。悔しさをバネに奮起し成功を掴んだ経験がある人(しばしば高学歴な人や社会的ステータスの高い人)ほど、その傾向が強いと感じます。

そうした成功体験は確かに素晴らしいものです。しかし果たしてそうした大人たちは、

子どもと自分とを切り離して、彼らをまだまだ成長途中の「個」として尊重できているでしょうか?

不合格になった時の我が子の悔しさと悲しみをリアルに想像できているでしょうか?

子どもがどんなにショックを受けても、自分は一切の動揺を見せない覚悟があるでしょうか?

打ちひしがれる子どもが、再び前を向いて進めるような言葉をかけられるでしょうか?

そもそも、心のどこかで「うちの子が全滅するはずない」と中学受験の現実を甘く見ていないでしょうか?

 

私が出会ってきた、子どもに危ない橋を渡らせようとする大人たちは、

我が子の不合格という事実を前に、子ども以上に動揺し、日に日に表情が固くなっていく

そんな姿がほとんどでした。

傷つき不安定になる親の姿が、子どもの奮起するきっかけになることはまずありません。

そんな親の姿を見て、子どもは「自分がお父さんお母さんを傷つけてしまった」と、さらに深く傷つくだけです。

 

正しい危機感とは

子どもによっては危機感を持つことが必要な場合もあります。

ですがそれは、完全に退路を断つようなものでありません。

もし合格を手にし浮かれすぎていると感じれば、もうワンランク上の厳しい学校にチャレンジすれば良いのです。

まだ人生経験の浅い子どもにとって、たった一校の不合格でもそれはとても大きな衝撃。その時、しっかりと前を向いて2月の第一志望校に臨める言葉を忘れずかけてあげてください。

 

中学受験はこの先まだまだ長く続く子どもの人生の通過点に過ぎません。それでもその経験が大きな影響を及ぼすのも事実です。

だから、たとえ途中にどれほど涙があろうとも、最後は家族皆で笑い合って終わる、そんな中学受験にしてほしいと思います。

 

 

 

お子さんの中学受験がこれから、と言う方は、ぜひ中学受験の光と闇を知ってほしいです。