4人のお子さん全員が東大理Ⅲに合格したことで知られる、佐藤亮子さん通称「佐藤ママ」。お子さんの教育に関心のある人で知らない人はいない、というほど有名な方ですよね。いわゆる「教育ママ」というイメージが強いかもしれませんが、著書を読んでみるとその印象が大きく変わると思います。今回そんな佐藤ママさんの主に幼児期の教育に関してご紹介してみたいと思います。
佐藤ママとは
3男1女全員が東京大学理科Ⅲ類(医学部)に合格された凄腕教育ママ。
佐藤ママは元高校の英語教師。結婚後は専業主婦としてお子さん方の教育に全力を注ぎ、今は中学受験塾「浜学園」のアドバイザーとして講演・執筆活動などを精力的に行われています。
佐藤ママの教育の神髄は、あふれんばかりの子どもへの「愛」
教育ママのイメージが独り歩きしがちな佐藤ママですが、実際に著書を読んでみると、とにかくパワフルでお子さんへの愛情にあふれた方だというのが伝わってきます。
また教育こそが子どもが幸せな人生を歩むために何より大事との信念をお持ちで、その実践では徹底した合理主義な一面に感られます。
その愛情豊かかつ合理的な教育実践法は、多くの人にとって参考になるのではないでしょうか。
第一子を妊娠中に小学校6年間の教科書全教科に目を通す
妊娠中に育児書を読む人は多いですが、佐藤ママは小学校の教科書(しかも実技教科まで含む)に目を通されたそうです。その理由として
「子どもが育っていくうえで、何が必要か、何が必要でないのか、を自分なりに見極めるため」
と語っています。
ネット社会では知育や教育に関する情報を得ることは簡単ですが、その簡単さゆえに、かえって情報に振り回されてしまうというデメリットもあります。
たとえば「叱らない育児」というものがありますが、その根本は子どもの気持ちに寄り添うことであって、他人に迷惑をかけても叱らずただ許す、ということではないはず。しかしいざ自分の育児で実践しようと思うと、意外とその線引きは難しいものですよね。
そこで大切になるのが「自分の軸」を確立すること。
佐藤ママは、自分の目で子どもたちがこれから学ぶ世界を俯瞰することで「基礎学力」が何より重要と結論を出して、文字の読み書きや計算を1歳の頃から公文で学ばせたそうです。
「子どもは怠け者で、勉強嫌いで、ウソもつくという」大前提
非常に興味深かったのが、子どもは「勉強が好きではない」という前提からスタートしたというお話でした。
つまり、子どもは勉強しないのが普通なのだから、勉強へのハードルを下げることが大事ということ。
たとえば、長男さんが1歳半で公文を始めた時、いきなり「これをやりなさい」と言うのではなく、まずは佐藤ママご自身が「これ面白いよ~」と楽しそうに解く姿を見せ、お子さんが「どんなのやってるの?」と興味を示すまで待ったとのこと。いったん興味を持てば、あとは自分でどんどん楽しんで解いていったそうです。
これはまさに目から鱗。たしかに「何よりも勉強が好き」と言えるのは、よほど変わり者な研究者くらいではないでしょうか。
教育というのは、どうしても美しい言葉で語られがちです。「子どもの無限の可能性」となどがその典型例でしょう。
しかし子どもを過度に美化するからこそ、上手くいかないと大人は勝手に落胆し、子育てに悩んでしまうのかもしれません。
佐藤ママも、子どもの無限の可能性や好奇心についてはもちろん肯定的に述べています。しかし、それよりも遊びが好きなのは、子どもも大人も同じ。
子どもに過度に期待をせず、しかし「基礎学力をつける」という軸をしっかり持つからこそ、「どうすれば子どもが少しでも楽しく勉強に取り組めるか」という前向きな考えへと繋がるのだと思います。
とりあえずやってみる。教育は「いいどこどり」でいい
保育園幼稚園、習い事など、子育てでは決めなくてはいけないことが山ほどあり、インターネットで調べ出すとキリがありません。
情報に振り回されてヘトヘトに疲れ果ててしまうのは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。
佐藤ママも、長男さんの幼児教育に関して調べていた際に悩まれたそうですが、ご主人から掛けられた言葉をきっかけに
「やる前から心配しても仕方がない!」
「まずはやってみて、いいとこどりすればいいんだ」
と決心がついたそうです。
迷っている間にも子どもはどんどん大きくなるので、とりあえず早く前に進んでみること、という力強い言葉に深く共感しました。
「子どものためだからこそ選択を失敗してはいけない」と慎重になってしまうのが親心ですが、まずは一歩踏み出すことが大事なのだと改めて思いました。
具体的な佐藤ママ流教育論と実践例
佐藤ママさんの教育論の特徴として「30年くらい前の子育て」を丁度良いとされる点があります。理由は「育児にはブームがあり、本当に正しいかどうかはすぐに分からない」から。たしかに、その時は「これが正しい」とされても、たとえば乳児のうつ伏せ寝のように、後に180度正誤が変わることは珍しくありません。
移り変わりの激しい世でも、人間にとって大事なことはそう簡単に変化しない、として育児法についても基本を大切にされています。
スマホに育児の代わりをさせない
ゲームやスマホに頼らず、必ず親が相手をするべき、と書かれています。
それは絵本の読み聞かせなど、親と遊ぶのは「親子のコミュニケーション」そのものだから。
たとえば読み聞かせというのは、決して「ながら」ではできません。自分のために100%親の時間を使ってくれている、という実感は子どもに安心感をもたらします。
我が家の息子たちはは4歳と1歳なので、どうしても次男の方から目を離せず、長男には「ちょっと待っててね」と我慢させることが増えてしまいます。そこで二人の寝かしつけ時間をずらし、次男が先に寝た後、長男の就寝までの30分間は絵本の読み聞かせをしたりワークを一緒に解いたりして「お母さんと自分だけの時間」になるようにしています。
子どもたちが成長しても、勉強を楽しいと感じてほしいですよね。それならば「今」子どもと一緒に楽しく学ぶ時間を過ごし、大好きなママやパパとの楽しい学びの記憶を積み重ねていくことが大事なのではないかと思います。
絵本の読み聞かせ「1万冊」。童謡「1万曲」
幼児教育に限らず「1万」という数字は何か特定の分野で一流となるための目安となる数値だそうです。1万冊というと大人には厳しいかもしれませんが、絵本は短いものが多いので、意外と達成できる数字です。
必ずしも違う本である必要はなく、子どもが「もう一回読んで」とお願いしてきたら、同じ本でも2冊とカウントしてOK。0歳から1日10冊読めば、3歳のうちには1万冊を超える計算になります。
佐藤ママは絵本は公文の推薦図書一覧を参考にし1日15冊、情感たっぷりに楽しみながらにママが読み上げ、童謡はカラオケ好きのご主人にも協力してもらったそうです。
絵本や童謡からは美しい日本語や豊富な語彙、日本の伝統文化などを学ぶことができます。
我が家の長男も先日保育園で読んだ絵本から、我が家には無い「こたつ」を知り、とても興味深かったのか熱心にこたつについて話してくれました。昔ながらの体験が減っていく現代だからこそ、絵本は偉大だと感じます。
まとめ:とにかく愛情たっぷりに、そして愛情を子どもに「伝える」佐藤ママ流子育て
佐藤ママさんの教育論はしばしば「過保護」「マザコンになってしまう」などと非難されますが、お子さんたちは大学進学後は親元を離れて自立ししっかり暮らされているようです。特に息子さんたちは普段はLINEの既読スルーが当たり前とのことですが、佐藤ママさんが大変な時には心配して様子を見に帰省してくれるとのこと。普段は適度な距離を保っていても、いざというときに親を大切にできる、それは何よりも佐藤ママの深い愛情がお子さんたちに十分に伝わってきた証拠ではないでしょうか。
周囲に何と言われようと「自分がこの子たちの親なのだ」という強い信念を持ち、子育てに邁進されてきた佐藤ママの本からは、いつの時代にも通じる子育ての真理が伝わってくると感じました。