長男が算数専用タブレット教材のRISU算数を使っている我が家ですが、RISU Japanの代表 今木氏の第二弾書籍が発売されたので、さっそく読んでみました。
前半はQ&A方式でまとめられており非常に読みやすかったので、
共感できる点と注意点とを、元スパルタ塾講ママの視点から述べてみたいと思います。
ビッグデータから導かれた優秀な子どもたちの行動パターン
RISUの特徴はなんといっても、サービス利用者の膨大な学習ビッグデータを保持している点にあります。
そうした学習データの分析結果と併せて、RISUを実際に利用している会員の中でも特に大手塾の模擬試験等で優秀な成績を収めた子どもの学習パターンの分析結果が本書にまとめられています。
また国内外の調査・研究結果なども引用されており、とかく感覚論になりがちな教育本の中でも、非常にロジカルなのが今木氏の著書の特徴です。
実際に読んでみて、特に印象に残った内容をご紹介します。
Q.子どもの習い事が多くて忙しくあまり勉強できない → A.極力減らそう
長男が3歳を過ぎた頃から、習い事について色々検討するようになりました。
結果、ピアノを始めて1年が経過しましたが、正直言ってこれ以上何か習い事増やす余裕はありません。
特に楽器系の習い事は、教室で習うよりも自宅での毎日の練習が重要になるので、登園前の朝と、帰宅後の寝るまでの時間の中に練習時間を組み込むだけで本当に大変です。
大事な成長期ですから睡眠時間を削るなどありえません。
楽器でなくても、スポーツ、ダンス、英会話、くもんなど、人気の習い事は多々ありますが、教室で習ったことを本気で身につけようと思ったら、やはり自宅で自主的に取り組むことは欠かせません。
実際、RISUの成績優秀者の中で習い事を3つ以上している子どもはほとんどいないそうです。
優秀なお子さんの親御さんは、
「ただ教室に通うだけでは意味が無い」
ということをよく理解されているのではないか、と感じました。
Q.宿題が嫌いな我が子 → A.親が手伝ってあげる or 代わりにやってあげる
本書を読んだ方で一番驚くのがこちらのQ&Aではないでしょうか。
詳しくは書籍を実際に読んでいただきたいと思いますが、塾講師時代の経験からも納得の内容でした。
要は、その子の学力レベルに合わない宿題を無理にさせるのは、ほぼ無意味であり、むしろ害ですらある、と今木氏は語っているのです。
たとえば、簡単すぎる計算問題や難しすぎる文章題を全員一律に宿題として課すのは、あまりに非効率であり、むしろ子どもの知的好奇心を奪い取ることにもなりかねません。
中学受験塾でも実践していた「宿題は無理に解かなくてOK」
中学受験塾で国語講師をしていた際、当然私も宿題を出していたわけですが、集団授業ではどうしても一人一人に違う内容を出すのは難しいものです。
そこで、例えば読解問題で私が指示していたのが、
「どうしても分からない問題があれば」解答を写してOK
というものでした。ただし、
・写したことが分かるように青ペンで書くこと
そして
・解答の根拠を理解できるよう解説をしかっかり読み込むこと
の2点は徹底させていました。
どうしても分からない問題は、どんなに時間をかけて悩んだところで現時点ではその子には解けません。
それならば、潔く「こういった問題ではこうした解答が正解となる」という知識を、解説を読み込むことで蓄積していく方がずっと効率的と考えたのです。
あるレベルの文章を理解できる状態になるためには、
語彙力や教養、そして一定以上の文章量に触れた経験が必要になります。
その経験がまだ不十分な子には、どんなに頑張っても正答(特に記述問題)するのは厳しいので、それよりもその文章を通して語彙力や教養を高めたり、「文章を読む経験」そのものの蓄積として宿題を活用するよう促しました。
全国トップレベルの子どもの算数の平均学習時間は1日たった15分
これはさすがに読む際に少々注意が必要なのではないかな、と感じました。
というのも、大手進学塾の模試を受験する子どもで「RISUだけ学習している」という子はほとんどいないのではないかと推察するからです。
おそらく、全国トップレベルの成績を叩き出している子どもたちは、中学受験を見据えて多くが塾通いしているはずですので、
「塾の学習もRISUでの学習もしており、そのうちRISUでの学習時間が15分程度」
というのが現実なのではないでしょうか。
ただ、上記を考慮したとしても、全国トップレベルの子どもたちが、
「短時間であっても、毎日自分のレベルに合った学習を習慣的にこなしている」
ということは言えるのだと思います。
塾講師の経験から考えても、淡々とやるべきことをこなすことができる子は、やはり強いです。
「やりたくない」だの「調子が出ない」だの余計なことを考えることなく、やるべきことをこなして、とにかく前に進む。
勉強にとって「やるかどうかをぐだぐだ悩む時間」というのは、まったくの無意味ですから、そうした無駄な時間の積み重ねの有無というのは、後々大きな差を生み出すに違いありません。
注意点:相関関係なのか因果関係なのかはぜひ注意して読んでほしい
本書は専門書や研究論文ではないものの、さすがRISUというか、相関関係と因果関係との違いには気を遣って表現されていると感じました。
(上記を混同した本というのは非常に多いのです)
ただ、読み手側も意識的に上記の違いに注意して読む必要はあると思います。
たとえば上記の「全国トップレベルの子どもは15分だけ勉強している」という内容、
「毎日15分だけ勉強すれば全国トップレベルになれる」
というのは極論ですし、少し意地悪な言い方をすれば、
「そもそも優秀な子だから毎日15分の勉強時間でも全国トップレベルになれるのでは」という反論もできるはずです。
勉強時間と学力に関連性があることは間違いないが、
どちらが原因で結果かは厳密にはわからない、ということです。
ただ、本当に因果関係まで結論付けられるものというのは実は稀です。
世の中のたいていのデータが示せるのは、あくまで相関関係なのです。
しかしだからといって、本書で紹介されている全国トップレベルの子の学習パターンを学ぶことが無意味というわけではありません。
むしろ多くのご家庭にとってヒントになることがたくさん詰まっているはずです。
したがって、軸足はあくまで目の前に我が子に置き、その上でデータはデータとして客観的に捉え、我が子に本当に必要なことを取り入れていくこと、が大切なのではないでしょうか。
そうした良い意味での批判精神を持った上で読むと、非常に学ぶべきところの多い本ではないかと感じました。