前回の記事では、器用な子が「器用貧乏」に陥る2つのパターンについてご紹介し、学ぶ「過程」の重要性について述べました。
今回は、本当に優秀な子の特徴から、器用貧乏との違い、幼少期に身につけたい力や経験について具体的に述べてみたいと思います。
「本当に優秀な子」の特徴
中学受験塾で多くの「本当に優秀な子」たちを見てきました。
性格も性別もそれこそ家族構成も多種多様な子たちがいましたが、共通点もありました。
特長①:好奇心旺盛
当たり前ですが、優秀な子は知的好奇心が旺盛です。だから結果的に勉強も好き。
特にこの特徴が強いタイプの子は、学ぶことそのものがご褒美のようなものなので、勉強を止める理由がありません。毎日勉強するのが当たり前となり、学習習慣も確立しています。
・特定の教科に特に秀でている天才タイプ
・全教科に秀でている万能タイプ
の2タイプがいますが、総じて勉強全般が好きなので、中学受験ではどの教科も極めて優秀なレベルに到達します。
かつての教え子で御三家に余裕で受かったB君は、
「どの教科も好きだから自分には苦手教科が無い」
「得意教科を選ぶのは難しい」
と清々しく言い切っていたのが印象的でした。
※B君を紹介した過去記事はこちら ↓↓
特長②:マイペース
優秀な子はマイペースな子が多いです。
たとえば塾でよく見られた、優秀な子たちの行動例は、
・授業中でも遠慮せず質問する
・他の子の成績をあまり気にしない
・友だちに「一緒に帰ろう」と誘われても、今どうしても解きたい問題があれば「自分はこれが終わってから帰る」ときっぱり断れる
など、自分軸がしっかりしている印象がありました。
特に「他の子の成績をあまり気にしない」は本当に重要なポイント。
どんなに頭の良い子であっても、過剰に他人と比較してしまうと総じて第一志望に受かりません。
他人との比較をいつまでも捨てられないと、どんどん無駄にエネルギーを消耗してしまい、本来なら追い込み期に使いたい爆発的なエネルギーが枯れてしまいます。
成績の上下に関係なく「最終的にはマイペースな子が強い」と毎年2月に感じていました。
特徴③:超負けず嫌い
解けない難問にぶち当たった時に、
「何としてでも解いてやろう!!!」
と絶対に諦めないのが本当に優秀な子です。
本当に優秀な子たちは戦う相手は他者ではなく自分自身ということをよく知っています。だからいつも自分の限界と闘っており、あくまで自分に対して負けず嫌い。
彼らは、答えが分かりそうで分からない苦しさの中で、頑張って分かった先に得られる快感を知っています。
だから難問に頭を抱えて悩んでいる時でもどこか楽しそうなのです。
二月の勝者の島津君、前田さん、といった桜花ゼミナールの2トップはまさにこのタイプですね。元教え子にも、前田さんにそっくりな女の子がいました。
本当に優秀な子の3つの特徴に共通するものは何か?
好奇心旺盛・マイペース・超負けず嫌い、こうした3つに共通するのは、
ある種の「幼児性」ではないでしょうか。
なぜなら、こうした力は幼少期に何かをしたから身についた、というより、
幼少期のまま変わることなく(失うことなく)成長した結果、
ではないかと思うからです。
これらの特徴が表れるのが、いわゆる2歳前後のイヤイヤ期。
この時期の子どもは、興味のあることは後先考えずかかわらずやろうとし、途中で止めさせようとすると盛大に抵抗します。
(我が家の2歳の次男も「自分でやりたい気持ち」と「できること」のギャップが大きくて、うまくいかないとよく悔しく大泣きしています。)
子どものイヤイヤに付き合うのは大人にとって大変ですが、この
「興味のあることを最後まで自力でやり切りたい」
という気持ちを抑圧せず大きく育ててあげることが、その後本格的な勉強になったときに
「何としても答えを出す!」という粘り強さに繋がるのではないか、と感じます。
この事を踏まえて、実際に優秀な子達の親御さんから聞いてきた、幼少期の過ごし方のポイントを考えてみたいと思います。
ポイント①:飽きるまでとことん繰り返す
子どもがいつまでも同じ遊びばかり繰り返していると、とつい呆れてしまう事はないでしょうか?
いつも同じ絵本ばかりを読んでいる、いつも同じおもちゃでばかり遊んでいる、といった同じことを繰り返す子どもの様子を見ると、大人というのはつい「こっちもやってみなよ」とか「あっちも面白いよ」といった余計な口出しをしたくなってしまうものです。
ですが、優秀な生徒達の幼少期の頃の話を聞くと、ブロック遊びであったり、動植物の観察であったり、あるいはアニメやゲームであったり、大抵何かしらの熱中していた遊びがあり、親御さんも無理に他のことをさせようとはしていなかったことが伺えます。
またこうした優秀なお子さんたちは、習い事もせいぜい1、2個(塾以前は特に無し、という子も)で、あまり多くはしていないのも特徴です。
ポイント②:実体験を大切にする
実体験の重要性は過去記事でもご紹介しました。
実際に子どもを育てていて、実体験のすごさを感じるのが「記憶の深さ」です。
2歳の息子は、夏に1度だけ新宿駅のホームで見た「特急あずさ」のお顔(先頭車両)の迫力に感動したようで、今でも「あずさのお顔、大きかったね!!」と何かにつけては繰り返し言っています。
元々電車好き少年なのでよく電車図鑑を眺めていますが、大きさや迫力というのは本物でないと味わえないもの。
百聞は一見に如かず、とはよく言ったもので、たった1回でも実体験することで深い長期記憶となって定着するのです。
ポイント③:親が子どもと一緒に楽しむ
好奇心旺盛に育つためには、興味の幅を広げてあげることも大切。
ですが、ポイント①でも述べたように、優秀な子がたくさんの習い事をしているわけではありません。
彼らは、絵本を読んだり、動植物を育てたり、料理をしたり、散歩をしたり、といった何気ない日常の中で子どもと一緒に楽しむことで、子どもの興味を引き出しているのです。
子どもというのは大人を真似るのが大好きですよね。
我が家の子どもたちも、化粧品とかパソコンとか、勝手に使ってほしくない私物ほど興味を強く示します。
逆に考えると、大人が楽しそうに色々なことに興味を示せば、それだけで子どもの興味が自然に広がる、ということ。
興味の幅が広がると「新しい事を知るのは楽しい」という経験が増えていきますから、いずれ自分で世界を広げていけるようになります。
そのためには、ただ図鑑を買ったり習い事をさせたりするのではなく、まずは親が楽しみ、その楽しさを子どもと共有することのほうが重要です。
※小学生以降の器用貧乏対策について一度のご紹介したこちら過去記事
結論:結果は副産物。楽しさの本質は過程にこそあり。
本当に優秀な子は結果を出すその過程にこそ、本質があることを知っています。
それは親子で楽しさを共有し、本物を見て感動し、一つの事をとことんやり尽くす経験をしてきたから。
「できる」という結果はその副産物でしかないのです。
そして、塾で出会ってきた優秀な子の親御さんたちもまた、
「成績が下がってしまった」
とか
「合格判定が上がらない」
といった、子どもの成績に一喜一憂する人はまずいませんでした。
どんなに優秀な子でも成績にムラがあったり、志望校判定で思う結果が出ないことはあります。
しかしそんな時も、分野別の到達度を冷静に分析していたり、宿題や過去問の進め方といった「過程」に関する質問をしてくださるのが優秀な子の保護者でした。
このような、結果よりも過程に目を向ける姿勢は必ず子どもにも映ります。
情報が溢れる現代では、つい効率良い方法や正解を求めようとしがちですが、目の前の我が子をよく見て、一緒に過程を楽しむこと、そうした地道な経験の積み重ねこそが子ども好奇心を伸ばし大きな成長に繋がるのではないかと考えます。