お子さんの読解力を伸ばそうと「本を読みなさい」と言っていませんか?
しかし読書より優先的にご家庭で取り組んでほしい事があります。
今回は、中学受験塾で10年間国語を指導し、御三家中学を含む幅広いタイプの受験生を指導してきた経験から、読書量と国語の読解力との関係性について述べてみたいと思います。
「読書をしない子は国語が苦手」はウソ
塾講師時代、国語が苦手な生徒の親御さんから、特に読解力に関してよくご相談を受けました。
そして皆さん必ず言うのが「うちの子は本を読まないから国語が苦手なんでしょうか…」という内容。
たしかに本好きには国語が得意な人が多いイメージがあるかもしれません。
そこで、バリバリの中学受験国語講師だった経験から、国語力(読解力)とは何なのか、そして国語の得意な子に育つ秘訣は何なのかを考えてみたいと思います。
読書習慣ほぼ無し。それでも国語が偏差値70のCさん
小5の夏という遅めの時期に入塾し中学受験対策を始めたCさんは、国語の成績がピカ一。
スタートが遅かったこともあり算数は少々苦手でしたが、国語の読解力が素晴らしく社会も得意だったため4教科偏差値が60を割ることが無く、十分に難関中学を目指せる位置にいました。
そのCさん、親御さんと面談して分かったのが「漫画は好きでよく読むけれど活字の本を読む習慣は特には無い」ということ。
なぜ彼女の国語力をここまで高いのか不思議に思っていました。
ある日「ら抜き言葉」や「敬語の誤用」など間違いやすい日本語に関する文章を授業で扱った際に、Cさんが「うちのお父さんも言葉にうるさいよ」と発言。
Cさんのお父さんは言葉遣いに非常に厳格な方で、たとえばCさんが「なにげにさー…」と発言すると、「『なにげに』という言葉はおかしい。
『なにげない』が正しい」とすかさず直させるそうです。
他にも、説明が曖昧だと「それってどういうこと?」と聞き返されるので、自然と主語や述語をなるべく省かないようになったとのこと。
たしかに何度かお迎えなどで実際にお父さんとお会いした際、お子さんに対し「子どもだから」と語彙レベルを下げず、大人の言葉で話されていたのが印象的でした。
「読書好き」なのに国語力が伸びない意外な落とし穴
「読書好きだから国語は得意なはず」と思っていたら、模試で思ったほど点数が取れずショックを受けた、ということも実はよくあります。
こうした「読書好き」のお子さんの共通点は「狭いジャンル(大抵は物語文やライトノベル)ばかり読んでいる」という点があります。
中学受験の国語で扱う文章は「これを小学生に読ませるのか!?」と思ってしまうほど抽象度が高く難解です。
特に説明文(もしくは論説文)では自然科学、社会科学、医学、生物学、哲学、文化論などテーマが多岐に渡り、大人が読んでも面白いですし、何より語彙と背景に必要となる教養レベルが非常に高いです。
偏ったジャンルばかりを読んでいると、読書量が多くても、語彙もや教養も増えないので、こうした難解な文章に対応できないのです。
そのため読書好きなのに説明文や論説文は苦手で、正答率が3割以下などということもよく起こります。
またこうした読書好きのお子さんは実は物語文の成績も安定しない傾向にあります。
つまり「苦手なジャンル」の文章にあたってしまうと、とたんに点数が取れなくなってしまうのです。
たとえば、歴史を舞台にした作品や、何十年も前に書かれた作品などはあまり子どもにとって馴染みのない語彙や言い回しを使われていることが多く、読書好きなお子さんでも十分に内容を理解できないことがあります。
つまり読書量が多くても実はあまり語彙力や教養が増えていないため、安定した読解力が身につかず、得点力に結びつかないのです。
子どもを子ども扱いしない!国語力の源は家族との会話
Cさんのに限らず、国語が得意な子の親御さんは皆さん例外なく言葉遣いが正確で語彙が豊富、子ども相手だからとレベルを下げないで会話します。
もちろん読書の好きな子もいましたが、特別読書好きというほどでなくても、国語の成績には直接関係ないというのが私の結論です。
(実はかくいう私も小学生時代特に読書好きではありませんでしたが、家庭環境のお陰で一貫して読解力は高かったと自負しています)
そもそも忙しい受験生が読書にかけられる時間はあまり多くありません。
ましてや読解力をつけたいからと、元々読書習慣のない人がわざわざ読書時間を設けるのはあまりに非効率。
4人のお子さんが全員東大理Ⅲに合格したことで有名な佐藤ママさんは、お子さんの国語の宿題に出された文章をお母さんが代わりに読んであげていたそうです。
理由としては、「耳から入る言葉を増やすことで、語彙や知識が増える」と仰っています。
全部読んであげるのは少々極端かもしれませんが、必ずしも自分で文章を読まなくても耳を使って国語の学習ができるということには、元中学受験国語講師の立場から完全に同意です。
ということは、国語のテキストに限らず、家族との会話でも言えるのではないでしょうか。
つまり家族での会話の語彙・論理・抽象度、テーマの多様性、などのレベルを意識的に上げることによって耳からのインプットを増やす。
さらに質問したり意見を出し合うことで、国語の読解で問われる「理由説明」「要約」などの訓練もできます。家族のコミュニケーションも活発になるので、大変お得な方法だと思います。
会話の題材は親御さんの仕事に関係する内容から入ると良いでしょう。
以前ブログでご紹介した、「お父さんが大好きな優等生B君」は、お父さんのお仕事の話をよく聞かせてもらっていたそうで、小5の時点で「公認会計士」「監査法人」といった単語を知っていてビックリしました 笑
※B君を紹介した記事はこちら ↓↓
結論:耳から入る情報の量と質が重要。家族で「ちょっと難しいこと」を話そう
家族での会話が充実させることで、読書量が少なくとも国語力・読解力を伸ばすことができます。
そのために親は意識的に教養を高める必要がありますので、そういう意味では子どもよりも親の方に読書習慣が必要と言えるかもしれません。
私も元国語講師の名に恥じぬよう、「忙しい」と言い訳せずしっかり本を読んでいかなければ、と記憶を整理しながら改めて思いました。
※具体的な国語の読解テクニックも受験にはもちろん必要。
基本的な読解テクニックを知りたい方はこちらがおすすめです。
ただし難関校別の対策はこの上にさらに別に必要ですのでご注意ください。
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【参考文献】