元塾講ママのシンプル知育

元中学受験塾講師。5歳と2歳の息子たちの「塾無し中学受験」を目論んでいます。

【書籍紹介】「10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方」元スパルタ塾講ママの率直レビュー

子どもの算数力を伸ばすにはどうすればよいのでしょうか?

もし親が理数科目が苦手だったら、子どもを算数を得意にすることはできないのでしょうか?

 

算数専用タブレット教材「RISU」との出会い

こんにちは。元スパルタ塾講ママです。

以前我が家は長男がタブレット教材の「RISU」を使っているというお話をしました。↓↓jukukoumama.com

 

その際に、RISUを始めるきっかけになったのが、タブレット学習サービスを展開するRISU Japan代表の今木智隆氏の著書 

10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方」 

を読んだことだったのですが、今回はこちらの本に関する感想を、元スパルタ塾講の立場から書いてみたいと思います。

 

計算偏重へ警鐘。文章題ができないのは「文章読解ができないから」ではない

このことに触れている時点で、元国語講師として「信頼できる本だ」と確信ました。

 

「算数の計算は得意だけれど文章題は苦手」という子は珍しくありません。

私は、算数担当講師から「あの子には国語の読解力を鍛えてもらわないと、算数の文章題を解けるようにならないと思う」という相談(?)を受けることがよくありました。

 

正直このような相談は的外れだ感じていました。

なぜなら、算数の文章題と国語の読解問題とでは、そのボリュームが全く違うからです。

その算数の文章題が苦手だという子が、国語の読解において、算数の文章題と同じ分量の文章を読めないということはありません。

まして内容面となれば国語の読解の方が通常はは難解なのです。(読解力を問うのですから当たり前です)

 

それなのに、算数の文章題を解けないのは国語の読解力不足のせいだ、と言われるのがどうしても納得できませんでした。

 

ただ、算数については専門外である以上無暗に反論もできず、毎年モヤモヤしながら相談を受けていました。

 

スピード重視になりがちな計算偏重の先取り学習

しかし私の長年のモヤモヤを晴らしてくれたのがこちらの10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方でした。

 

中学受験専門塾に入る前に公文に通ったり計算ドリルこなしたりして算数の先取り学習をするのは、中学受験のスタンダードです。

小学校6年間分、中には中学の内容まで先取りして入塾してくる子もいます。

 

こういった場合「自分は小学校の算数は全部終わっているからヨユー」と油断していることが、お子さんにも親御さんにもありがちです。

 

しかし算数は計算だけではありません。

 

文章題も図形問題もあります。算数=計算と思って先取り学習を進めしまうと、「自分は算数が得意だ」という思い込みから、文章題や図形に歯が立たなくなってしまう恐れがあるのです。

 

そこで、著書の中で述べられていた、算数の文章題を解けるようになるための3つのステップを紹介していきます。

 

スピード競争をさせない。速く解けたことをほめ過ぎない

計算練習はどうしてもスピード重視になりがち。

 

速く解けたことを褒められると、子どもはますます速く解こうとしてしまい「じっくり考える」姿勢が育ちません。

その結果、文章題を解こうとしたときに、きちんと理解しないまま文章内の数字を適当に当てはめて適当な式を立ててしまうのです。

 

だからまず「速く解けるのが偉い」とつい褒めてしまう親の態度を改めることが必要だと述べられていました。

 

音読させる

実は黙読というのはとても高度な技術です。

 

心理学者のヴィゴツキーによると、人は成長の過程で思考が外から内へと移行してくと言います。

つまり小さい子どもは思っていることが声に出てしまいますが、成長するにつれて声には出さず頭の中だけで言語を使って思考できるようになるのです。

そのためまだ幼い子どもにとって「黙読で文章を正しく理解する」というのは実はとても難しいこと。

 

大人であっても、仕事で細かい資料を読み込まなければいけないときなど、つい声に出して読みたくなりますよね。

 

だから分からない時はなるべく音読をさせることで、文章題の意味を理解することがだいぶ楽になります。

 

私が担当していた国語でも、質問に来た生徒に設問の音読をさせただけで、私が何も教えなくても、「あ!分かった!」と勝手に解決して帰っていってしまうことがよくありました。

 

式を立てる練習をする

計算が得意なお子さんには、「計算はしない」と予め言っておき「式を立てる練習」を多くさせるのが効果的なのだそう。

 

塾講時代、算数の質問に来る子たちに多かったのが

「式を立てられない」

「でたらめに足し算や掛け算を当てはめている」

「分子と分母が逆になっている」

などでした。

これらはつまり、文章が読めていないというより、文章を読んで式に変換する「抽象化」ができていないことを意味します。

 

そして、これは算数の各単元の「概念」を根本的に理解できていないのではないか、と感じていました。

 

たとえば割合の問題ではよく分子と分母を逆にしてしまう生徒の場合、

(正直「くらべられる量」「もとにする量」という表現が分かりにくいせいだと思うのですが…)

「割合とは、『どちらから見て、何倍か』を表す」、という割合の根本概念を実感として体得できていないように思えました。

 

計算練習に偏ってしまうと、そうした「概念を理解すること」を飛ばしてしまうので、いざ本格的に算数を学習し始めた時に思わぬ穴に落ちてしまう、という恐れがあるのでしょう。

 

算数の文章題は将来社会に出ても役に立つ

よく算数や数学を学ぶ理由として「論理的思考力を養う」と言います。

 

中学受験の算数では何段階かに分けて計算し、最終的な答えを出す問題が多いのですが、「まずどこから手を付けるべきか」「次に何を求めるべきか」といった、解答までの道筋が見えるかが重要だと思います。

 

これは仕事の段取りであったり、資料作成など、たくさんの要素を簡潔にまとめあげる能力に繋がります。

 

論理的思考力が高い人は無駄が少ないため、何事もスムーズに進められますし、分かりやすく人に説明することができるのです。

 

他にも合理的な算数学習のヒントがたくさん詰まっている

文系の自分がどう息子たちを「理系科目好き」に育てるか、という悩みを感じて手に取ったこの本でしたが、算数というものを体系的に、そしてロジカルかつシンプルに捉える筆者の姿勢には、学ぶところが多くありました。

 

そして算数学習のテクニックとは違う、もっとベースの部分で必要となる学習姿勢を知ることができたので、自身の子どもたちの知育の上に、ぜひ参考にさせていただこうと思います。