中学受験を題材にした大人気漫画「二月の勝者」の最新刊17巻が2/7に発売されました。
先日ようやく読めたので、率直な感想を中学受験の世界にどっぷり浸かっていた元塾講師と子育てママの目線から述べたいと思います。
2/1東京・神奈川中学入試スタート!
こんにちは。元スパルタ塾講ママです。
「二月の勝者」17巻では、受験生たちが2/1の入試に挑み、講師たちがその報告を待つところからスタートします。
18時から2/1午前の受験結果がどんどん発表され、息をつく暇もないほど怒涛の合否報告が飛び交います。
まさに私も数年前まで、毎年毎年同じように緊張・歓喜・落胆の感情のジェットコースターを経験していました。
※ある生徒との2/1日からの数日間。↓↓
不合格に号泣する子どもたち
やはり印象的だったのが、不合格に号泣する子どもたちの姿。
自分が実際に見てきた生徒たちの姿と重なって、当時の悔しさや悲しさがハッキリと蘇り、涙なしには読めませんでした。
大抵の小学生は「不合格」をリアルに想定できません。
それは「自分の望むものからの拒絶」をまだ殆ど経験したことがないから。
だから「不合格になる人」がいるのは知っていても、合格する自分のイメージに引っ張られて「たぶん自分は大丈夫だろう」と心のどこかで思ってしまうのです。
そんな小学生たちにとって、つい今日受けたばかりの学校から、その夜に入学を拒絶される体験は想像を絶するほどの衝撃なのです。
罪悪感から自分を責める親たち
そして、親になった今改めて心に刺さったのは、そうした子どもたちの姿を一番そばに見守る親たちの心中でした。
「我が子のため」と思って始めた中学受験。
それでも生まれて初めて「不合格」を突き付けられる現実が、どれほど子どもにとって大きな衝撃か、本当に理解できていた親はほとんどいないのでしょう。
何度も挫折や失敗を経験している大人は、自分事であれば「そういうこともある」と、ある程度冷静になれるものでしょう。
しかし我が子のことであれば別。
子どもの悲しさも悔しさも、どんなに代わってやりたくともそれは叶いません。
不合格もあり得るのは分かっていても、傷つき打ちひしがれる子どもの姿を見るのは胸が張り裂ける思いのはずです。
だから黒木先生が不合格の生徒のお母さんにかけた
「どうかご自分を責めることはなさらぬよう」
「家族の笑顔が一番の応援」
という言葉は、どんなに救いになったかと思います。
何かを得るためには何かを失わなければならない
これはおそらく「二月の勝者」で3本の指に入る、中学受験の真理をついた明言だと感じました。
合格可能性80%を出していたにもかかわらず、2/1の午前も午後も不合格となった加藤君。
鉄道好きで、志望校の鉄道研究会に入るという目標を持ってから、最下層の成績から目覚ましい成長を遂げた彼でした。
しかしただ好きなことに真っ直ぐなだけでは、勝負の世界では通用しないことを黒木先生は悟ります。
そこで荒療治と称して
「努力しても報われない理不尽な現実」
を加藤君に突き付け、本当にそれでいいのか、納得できるのか、と揺さぶりをかけます。
初めて己の中にある「悔しさ」を直視した加藤君は大号泣。
「悔しい!悔しい悔しい!!!明日は絶対に絶対に合格してやる!!!」
と叫ぶのでした。
そうして迎えた2/2。受験会場には「純粋な少年らしさ」を捨て去り、「勝つこと」だけをまっすぐ見つめる勝負師へと変貌を遂げた加藤君の姿が。
私の経験上、この域に到達した生徒はまず負けることがありません。
模試の偏差値や合否判定よりも、ずっと予測性があるほどです。
その姿を見て、おそらく黒木先生も「勝ち」を確信したと思います。
中学受験の偏差値は精神年齢に比例する
※以前このような内容の記事を書きました。↓↓
加藤君は元々持っている能力や集中力に光るものがあったからこそ、「鉄道」という情熱を受験に向けさせることで成績を上げてきました。
しかし本気で勉強を始めてからは、順調に成長してきたがゆえに大きな挫折は経験しておらず、精神面は「純粋な少年らしさ」のままだったのでしょう。
それでは勝てない、というのが中学受験の残酷さであり現実だとこの作品では描かれています。
つくづく精神年齢を引き上げることが中学受験では重要なのだと確信しました。
まとめ:大人が寂しく感じるほど、子どもを一気に変えてしまう中学受験
12歳の子どもが、たった一人で自分の人生を左右するほどの大勝負に立ち向かう中学受験。
私もたくさんの受験生を見てきましたが、受験を経て成長した生徒達を「幼かったあの子がすっかり成長したな」と頼もしく、しかし寂しくも感じる経験を繰り返してきました。
12歳という時期は、精神的に未熟だからこそ大人のサポートは欠かせませんが、そこを乗り越えた先には大人の想像を遥かに超える大きな成長があるのです。
数年後我が子もこの大勝負に挑むかもしれません。
この「二月の勝者」17巻を読んで、中学受験というものが親にとっても子にとっても、厳しくそして熱い世界なのだと、改めて実感しました。
自分が数年後その時を迎えたら、いつも我が子に寄り添い、そして時には背中をそっと押せる、そんな親でありがたいと思います。